「守ってあげたい!」小松江里子ドラマの男たち
最近月9が面白くない。
恋愛ドラマもつまらない。
ときめけない。
どこか全てが何かの焼き回しに感じる。
恋愛ドラマはもう終わってしまったんだろうか。
そもそも面白いと感じてた時代っていつなんだろう。
そんな時代あったのかなぁなんて思ってしまうくらい。
でも確実にその時代はあった。
私が恋愛ドラマを見て、ときめいていたのはいつなんだろう?
女性がときめくのは、可愛いヒロインより、圧倒的にかっこいい男に違いない。
「かっこいい男の子に、ヒロインと同じように恋をすること」
それが恋愛ドラマの最高の成功かもしれない。
脚本家の小松江里子は、私がそんな風に恋をした男をたくさんたくさん作りだした。
イケメンで高身長、クールなんだけど恋愛下手でツンデレ、そんな記号的な”イケメン”じゃない。
私がクラスメイトとともに恋をして、毎週が待ち遠しい気持ちを持っていた頃を思い出してみる。
(なんか怖い)
そんな時、思い出すのは小松江里子のドラマで主人公を演じたドラマの中の男の子。
あの頃、私たちの間で空前の話題を呼んだ*1堂本剛が演じた、男の子たちだった。
「青の時代」*2を見て、『こんな不良青年を守ってあげたい!」と思った。
「to Heart〜恋して死にたい」*3では、『私も誰かをこんなに応援したい!」と思った。
ただドラマを見ていると「この人かっこいい!」ということにしか気がつかないけど、実はそんな魅力的な男の子たちには共通項があった。
- 恋に不器用
- 正義感が強い
- まっすぐでアツい
- 少年のような幼さ
この4つ。そのかっこよさや危なっかしさに夢中になって、そして切なくなってしまう。
だって私たちはこんなに正直に生きてない。
ドラマでも彼らは正直すぎるがゆえに、裏切られたり、間違えたりする。
だから切なくなってしまうのだ。
優柔不断で、鈍くて、気が利かないし、恥ずかしいと思うところもたくさんある。
決して完璧な王子様ではないけど、そんな男性像は小松江里子ドラマの魅力だと思う。
小松江里子とプロデューサーの伊藤一尋*4は、このようなドラマをいくつも作りだした。
そんな素敵な夫婦が目をつけたのが堂本剛だった。
あの頃、クラスメイトはみんな堂本剛が好きだった。
誰に聞いても好きだったというのは、今となったらかなりすごいことのように思える。
彼のハイスペックすぎた顔面はもちろんだけど、そこにはドラマの役柄はかなり影響していたと思うし、彼自身が危うい少年のような儚さと強い意志を持っていたからだと思う。
まさに、役にピッタリ。当時はたくさんの役柄を演じていたし、なかでも「青春三部作」*5は有名どころ。
これらはプロデューサーの伊藤と堂本剛の出会いから生まれている。
「彼の成長が見たい」
この理由で10年にも渡って色々な堂本剛を作り上げてきたというからすごい。
例えば、
◆若葉のころ→相沢武司
働かない父親に代わって一家の大黒柱として生きる苦学生。とても頑固で真面目。
お腹を空かせた妹弟を養うことで精一杯。正反対の生活環境に置かれたクラスメイトの甲斐*6との友情モノ。彼らまとめてとてもひたむきで儚くて脆い。
◆青の時代→安積リュウ
天涯孤独で非行を繰り返す不良。大人に騙されて、立ち直りたくてもいつも出鼻を挫かれる。支えるヒロイン*7がなんども彼を励まし続ける。
◆to Heart〜恋して死にたい〜→時枝ユウジ
ボクシングに夢中でいつも必死。しかも報われない恋をしているという健気さ。スポーツ一筋だから、かなり鈍いし、結構失礼。
つまりは、「頑張れ、時枝ユウジ」。
◆Summer Snow→篠田夏生
「ひとつ屋根の下」をおしゃれに今風な感じにしたのがこれ。下町の元気な兄ちゃん。おまけに金髪。
耳の不自由な弟や結構やり手な妹を心配しすぎて、やりすぎなくらい世話を焼く一家の大黒柱。
そして注目すべきはドラマのなかのヒロインたち。
彼女らは、ただひたむきに彼らに恋をしている。
「時枝ユウジのためなら死ねる!」
と豪語していたヒロインもいたくらい、彼女たちは彼らを守るためなら命を投げ出す。*8
守りたい、助けたいと強く思う彼女たちは、しっかりと彼らに守られている。
まっすぐすぎて、ヒロインとも衝突するし、
ひどい言葉もかけてしまう。
優しく甘い言葉は、しょっちゅう出てこない。
だけど彼には嘘がない。純粋に感情を表現している。(なぜなら少年だからね。)
彼らは恋に不器用で、なかなかうまく進まない。
だけど、「恋愛ドラマは付き合うと面白くない」とうのが私の通説。
だからこそ小松江里子のドラマは面白いのかもしれない。
ちょっと時代遅れの汗くさい男、そんなの今の恋愛ドラマじゃ振られ役だし、基本的にちょっと太っているかダサい男として演出されてる。
こうした男の子は今ヒロインの隣に並んでいない。
今の恋愛ドラマで失われたのはこういう、魅力ある男の子じゃないのかな。
彼らは壁ドンこそしないけど、ただ必死に生きてる。
そんな切実さやアツさを恋愛ドラマは失ってしまった気がする。
きっと私はまた恋をしたくなったら、小松江里子のドラマの彼らに会いに行くかもしれない。
時代が変わっても色褪せない。
そんな魅力あるキャラクターを今後も探していきたい。