「我輩の部屋である」ー本当の自分は、自分の部屋にしかいないー

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部屋にいる自分を側から見たら悲惨なものだ。

テカテカのすっぴん、自堕落な体制、そして何より意味のわからないTシャツを着ていたりする。好きな人がいたり、彼氏がいたらこんな姿は見せられない。すぐさま変なTシャツは脱いで、ジェラピケのモコモコのルームウェアに着替えるし、ルームスプレーだってふるかもしれない。明らかにそれは「よそいき」の私だ。

 

リラックスした自然体の自分をさらけ出せる誰も見ていない空間、それが自分の部屋だったりする。そんな素敵な空間を守るのは、主人である自分しかいない。

だからこそ、台所にあるスポンジたての吸盤が弱くなったことも、カーペットの角が少し立ってしまっていることも、どうでもいいことのように見えて、一大事だ。

 

「我輩の部屋である」の主人公・哲郎は必死に、自分の部屋である城を守るために一生懸命。

例えば、お母さんにもらったお土産のこけし1つで部屋の空間は変わってしまうと哲郎は空間演出を考え始めたりする。明日のデートに向けて効率の良い部屋干し方法を考えたり、山間部斜面再現を試みたり、哲郎はいつも大真面目に考察している。

 

主人公の哲郎は大学院生で、自分の部屋で大真面目に考察したり、大好きな植村さんとのことを考えたり、親友の吉田と喧嘩をしたりしている。

このドラマに出てくるのは主人公の哲郎ただ一人。そして彼の部屋に置いてある家具たちがツッコミ役で登場している。ただ部屋にいる哲郎を見ている視聴者の代弁役といったところだ。だからこそ本当に哲郎だけしか出てこない。

哲郎の周りの人間と言えば、大好きな植村さんと親友の吉田、そして自分に好意があると勝手に勘違いしていた佐々木さん。彼らは声すらも出てこない。

本当に哲郎と彼の部屋だけである。

 

強気に出たり、カッコつけたり、学者風になったり、色々な姿の哲郎が、その部屋にいる。私も自分の部屋で色々と独り言を言ってしまうから、哲郎の気持ちはよくわかる。あそこまでおかしくはないけど。(笑)

植村さんのメールや電話に一喜一憂したり、普通に電話番号を聞けばいいのに、どうしたら聞き出せるか試行錯誤している感じもとても可愛い。

家具たちツッコミも冴え渡るが、それくらい私も哲郎に突っ込まずにはいられなくなる。ツッコまれても、カッコつけ続ける哲郎だが、きっと友達の前ではこうじゃないだろう。

いきなり「えぇ…?」と素っ頓狂な声を出しちゃう哲郎が本当の哲郎だったりする。

そんな哲郎がとても人間らしい。

 

いろんな自分が出せる空間、そして突っ込まれても気にしないで演じられる、自由で最高の空間、それこそが「我輩の部屋である」。