「黒い十人の女」ー戦う女の可愛らしさー

他人のプライベートを覗き見することは楽しいかもしれない。

自分じゃないから、楽しめる。そして、その戦いをお茶を飲みながら笑って見ている、それが女なのかもしれない。

人が深みにはまって抜け出せなくなってる様子だったり、ドロドロしてるのって気になるし見たくなるよね?結局何よりそれが一番美味しいコーヒーのお菓子になるんでしょ?って言われているような気分になるドラマ、「黒い十人の女」が最終回を迎えましたが、私はかなりこのドラマが好きでした。

なぜ私はこのドラマに惹かれたのか…それは3つある。 

 

⒈不倫相手に魅力が全くない!

今まで不倫ドラマはたくさんあったけど、なんだかどれもすごく素敵な恋愛ドラマに描かれていた。愛し合っているのに…、出会う順番を間違えてしまって…、なんかそういうセリフがついてくる。そして、逃避行するか別れるか奥さんに刺される…。そして美男美女だった。今回の不倫相手はドラマの中でも「この男のどこがいいんだか」と言っているくらい、普通の中年、そして浮気性。9人の浮気相手と1人の妻をもつ、馬鹿な男である。だけど、なぜか不倫してしまう。なぜかすごく惹かれる男。なんか切れない、なんか惹かれる、そういうポイントがあるおじさん。そこがとてもリアルで、そして面白いポイントでもあった。

 

⒉「クソ」「ババア」「ブス」のオンパレード

お分かりの通り、女たちが争い始めるなら、口は悪くなるのは当然だ。『ファーストクラス』のマウンティング女子じゃん!!ってくらいに、お互いを罵り始める。「ファーストクラス」では、外面は笑顔なのに心の声はぐしゃぐしゃだったのが印象的。だけどこのドラマでは、本人に思い切り罵詈雑言をぶつけている。そしてカフェラテまで何杯も顔にかけつづける。

そしてなんどもこう言う。「クソ」「ババア」「ブス」。女の子はいつでも可愛いなんて妄想だ。自分より1つでも年上なら「ババア」といえば相手に刺さるし、少しでも自分が可愛ければ「ブス」という。そして誰彼構わず使う「クソ」。だけど違和感がないのはどうしてだろう。だって女の子はよくこのワードを使うからだ。バカリズムがここまで女子をわかっているとは驚いた。そして現代の女子のありのままの姿がそこにあるとも感じた。

だけど彼女たちを憎めないのはどうしてだろう。

それは、カフェラテをかけたり、罵ったり、そんなことをする権利が彼女たちにはないからかもしれない。だって彼女も愛人だから。自分も愛人なのにも関わらず、他の愛人を見て貶し続けることで、主観と客観の両方を味わえるのも新鮮だった。最終回で、奥様に正論をぶちまけられ、凹む彼女たちもとてもおかしく、そして可愛らしくも思えた。

 

⒊LINEの使い方がうまい

LINEは最近ドラマでもよく使われています。だけど毎回演者に無駄にアテレコさせたりするのがすごく違和感があった。それに少しLINEではなく、ただのメールのようにも感じたし、ちょっとずれてる感じがあった。だけど、このドラマでLINEをしている時に余計な音はなにもない。すごく静かで、スタンプの使い方もすごくリアル。

「イタリア人みたいだね」と言われたときに送るピザのスタンプや、何度か間違うスタンプ攻撃やスタンプだけの会話。私がよくやるLINEとすごくにていて、友達のLINEを覗き見ているかのような感覚を味わえた。そのLINEを見ているだけでとても楽しかった。そしてその感覚こそ、このドラマでいう「げすい」女の感覚なのかもしれない。

 

 

そして最後に、「不倫を卒業、不倫を留年」という響きがすごくよかった。不倫は誰でも始められることなのかもしれない。だけど一番難しいのは卒業。卒業することができないために、ずっと留年し続ける道を選んでしまう。

不倫とは、客観的に見ている分には生ぬるくてしょーもないものだが主観的に見ると「戦争」なのだとドラマで言っていた。好きで不倫をしているわけじゃない、独り占めしたいと思っているのが本音で、そうするには戦わなければならないのだ。

女同士の戦いは、見ている分には一番面白いものなのかもしれない。だけど、彼女たちは必死に戦っている。いつだって可愛くいたいかもしれない。だけど「クズ」「ババア」「ブス」を連呼して、ひとりの人のために、そして自分のために戦う彼女たちはとても可愛い存在に思えた。 

 

そしてそこにあるのが女の子のリアルだと思えるドラマだった。